これ。
これ衝撃だったんだけど、普通同じ大きさの物なら遠くにあるほど小さく見えるよね?でも宇宙ではある距離を超えると逆に遠くにあるほど大きく見えるんだって!宇宙が膨張してるから、遠くの銀河から届く光ほど広がって、見かけ上大きくなるそう。遠近法を破ってくる宇宙スゲェ…
— 石松拓人🛰 (@notactor) July 31, 2020
Credit: Mark Whittle pic.twitter.com/X0Kwah0ERM
冷静に考えると、「光が広がるってどういうこと?」ってなるよね。重力レンズならば、一部が大きく見える分周囲は小さくなって整合性が取れるけれど、宇宙の膨張は等方的だからどこの方向を見ても大きく見えるはずで、「しわ寄せはどこに行くんだ?」という話になるよね。リプライや引用リツイートで「『猫の恩返し』のバロンのセリフだ!」と盛り上がっているが、そんな文学的な話ではなく、科学的な話が気になる。
ということで調べた。
答え。(現在の位置や赤方偏移的な意味で)遠くにある銀河は、(視差的な意味で)近くに見える。近くにあるのだから大きく見える。
参考文献
Closer Than They Appear | by Brian Koberlein
画像の出典。詳しい説明は無し。
The Case for a Positive Lambda-Term - V. Sahni & A. Starobinsky
ここが詳しい……が、読み切れていない。
“宇宙の果て”が137億光年でない理由 ― 宇宙は 400 億光年先まで見えている ―
赤方偏移と距離の関係が載っている。
距離とは?
そもそも、どうやって距離を測るのか。部屋の中くらいのスケールならば、人間の目は2個あるので距離感が分かるし、メジャーで測れば良い。カッコイイのだとレーザー距離計がある。
宇宙スケールではどうするのか?というところで、宇宙の距離梯子という概念がある。
月や近くの惑星規模ならレーザーで測れる。地球人が得られる最大の目の間隔であるところの地球の公転直径で数百光年までなら測れる。古いアニメなどで宇宙規模の距離を表わすのに光年の代わりにパーセクが出てきて、「なぜこんな面倒な定義の距離を使うんだ?」と思っていたけど、距離の測定方法が年周視差だからなのか。「距離によって左目と右目の見え方が変わるよね」という仕組みで距離が測れるのはここまで。
それ以上は、宇宙の天体の中で(見た目の明るさではなく)絶対的な明るさが分かるものを探すという話になるらしい。本当は明るい星が暗く見えたら、その星は遠い。これで測れるのが、数十億光年まで。これ以上は超新星爆発といえども暗すぎて無理なのだろう。
ここから先は赤方偏移。遠くにあるものほど赤く見える。星の色は様々だけれど、銀河くらい星が集まっていれば一定になるだろうという話だろうか。どうせこの距離では、個々の星は見えず、銀河しか見えないし。なお、Wikipediaに書いてあるように、ドップラー効果と宇宙論的赤方偏移は別である。遠くの星は早く遠ざかっているからドップラー効果で赤く見えるよねということ(だけ)ではない。光の経路全体で宇宙の膨張によるドップラー効果を積分すれば宇宙論的赤方偏移になるのかな? ということで、遠方の天体については赤方偏移しか方法が無く、本当の距離(とは?)と赤方偏移の対応もあいまい。だから、遠い天体の距離は赤方偏移で表わすらしい。
光年という距離の単位があるのだから、光の速度は有限である。数十億光年先の天体は数十億年前の姿。遠くの宇宙を観察するということは、昔の宇宙を観察するということである。距離の話をするときには、ある天体が光を発したときの距離なのか、(観察できない)現在の距離なのかを区別する必要がある。
赤方偏移と現在の距離と光を発したときの距離
これを知らなくて混乱したしビックリした。「現在遠くにある天体ほど赤方偏移が大きい」は正しい。「現在遠くにある天体ほど光を発したのは過去である」も正しい。「光を発した時点で遠くにあった天体ほど赤方偏移が大きい」は間違っている。「現在遠くにある天体ほど光を発した時点の距離が遠い」も間違い。
https://www.sci-museum.jp/files/pdf/study/research/2010/pb20_061-064.pdf
「初めの位置」だけ、赤方偏移が大きい領域では減少している。
現在314億光年の距離にある銀河A、171億光年にある銀河B、4億光年にある銀河Cの様子を図示するとこんな感じだろうか。
上記のPDFの表から、抜粋して適当に値を丸めるとこうなる。
z | T億年 | x(現在)億光年 | x0億光年 |
---|---|---|---|
0.03 | 4 | 4 | 4 |
2.00 | 103 | 171 | 57 |
10.00 | 132 | 314 | 29 |
T億年前に距離x0億光年で発した光を我々は見ており、現在はx億光年の距離にある。
132億年前に銀河Aが光を発する。この時点で銀河Aは29億光年の位置にある。
103億年前に銀河Bが光を発する。宇宙は膨張しており、この時点で銀河Bは57億光年の位置にある。ここら辺と光速度不変の法則がどう関係してくるのかがいまいち分からないのだけど、宇宙がうにょ~んと伸びているのだから、銀河Aの発した光が、132億年前に地球から見た銀河Aの位置より遠くにいくこともあるのだろう。たぶん。
4億年前(≒現在)に銀河Cが光を発する。そして、地球に銀河A, B, Cの発した光が届く。
地球からは、それぞれ132億年前、103億年前、4億年前の銀河A, B, Cの姿が見えている。その見かけ上の位置は、光を発した時点の位置のはず。銀河Cは当然すぐ近くだが、銀河Bは銀河Aよりも遠くなる。
私が瞳孔間距離数億光年で赤外線を見ることのできる目を手に入れて、遠くの銀河を青いほうから赤いほうに辿っていくと、最初は赤い銀河ほど遠くにあり、ある地点(赤方偏移z=2くらい)から今度は赤ければ赤いほど近くに見えるようになるはずである。
距離と見かけの大きさ
ここまで納得してしまえば後は簡単で、現在遠くにある銀河は近くに見えるのだから、見かけの大きさが大きいというだけの話である。